日々小論

  • 印刷

 9人のダンサーが波のように手足をうねらせる。踊りの合間に聞こえる息づかい。流れる汗。その動きは、絶え間ない感染症の攻撃から脱出しようともがく私たちのようにも見えた。

 「防波堤」と名付けられたパフォーマンスは、世界的な振付家ダミアン・ジャレ氏らがパリ・オペラ座のために制作したが、新型コロナウイルスのため公演は中止になった。今秋に開かれた京都国際写真祭で映像作品として上映された。

 写真祭は東日本大震災と原発事故を機に始まった。防波堤が披露された二条城の会場は、震災や新型コロナへの作家の思いが共鳴する作品を集めた。

 主催者は問う。復興の名のもとに誘致された東京五輪は、被災地で困難な生活を強いられた人々を置き去りにし、コロナ感染が拡大して対策や医療が追いつかない中で強行された。「この矛盾をどう受け止めて未来に向かえばいいのか」と。

 翻って衆院選。岸田文雄首相はこの選挙を「未来選択選挙」と位置付ける。公明党の山口那津男代表は、18歳以下の子どもに10万円を支給する「未来応援給付」を掲げる。みんな未来を語るのが好きだ。

 しかし未来は必ずしもキラキラしたものではなく、過去と現在の続きにある。感染者は減っても、自宅療養中に多くの人が亡くなり、その最中に納得のいく説明もなく五輪が開かれたことを私たちは忘れない。

 参院選での買収事件や森友、加計学園を巡る官僚の忖度(そんたく)と文書改ざんなど、民主主義の根幹が揺らぐこともあった。未来を語るなら、まず政治不信を生んだこれらの出来事に決着をつけてほしい。さもないと、私たちは今後も不信という名の海でもがき続けることになる。

日々小論の最新
もっと見る
 

天気(12月1日)

  • 12℃
  • 8℃
  • 50%

  • 10℃
  • 5℃
  • 60%

  • 13℃
  • 9℃
  • 80%

  • 12℃
  • 9℃
  • 70%

お知らせ