日々小論

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 8月、広島市の平和記念式典で、菅義偉首相(当時)があいさつの一部を読み飛ばした。「核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、核兵器のない世界の実現に向けた努力を着実に積み重ねていく」などのくだりだ。

 菅首相はその後「この場を借りておわびする」と陳謝。しかし、その日のうちに「原稿を貼り合わせる際に使ったのりが予定外の場所に付着し、めくれない状態だった」との「政府関係者」の説明が報道された。

 疑問を抱いたのが、広島市在住で元朝日新聞記者のフリージャーナリスト、宮崎園子さんらだ。広島市の情報公開条例に基づいて開示を求め、首相のあいさつ文の原本を調べた。

 原本はA4サイズの薄い紙を横に7枚並べ、継ぎ目の裏から幅約2センチの細い紙をのりで貼ってつないでいた。首相が読み飛ばした部分に、のりがはみ出したり、くっついた部分を無理にはがしたりした痕跡はまったく見つからなかったという。

 「政府関係者が言う『事務方のミス』はない。あまりにも見事な仕事ぶり」と宮崎さん。首相や同行者らは会見後すぐに広島をたっており、その後もあいさつ文の原本を確認できない状態だったことも指摘した。

 宮崎さんは「政府は単なる読み飛ばしさえ認めない」と憤る。さらに声を強めた次の一言にドキリとした。「政府関係者の説明をろくに確認もせず、ただ報道する側にも問題がある」

 役所や警察などへの取材を長く続ける中で、それらからの情報に頼り、自らの五感や足を使って証拠や証人といった「1次情報」に近づく努力を怠っていないか-。そんな当たり前のことを当たり前に徹底する重要性をあらためて痛感した。

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