日々小論

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 同じ社の先輩記者が退職後、故郷の宍粟市千種町に戻り、実家の農家を継いでいる。岡山県との境に近い中山間地域の水田でコメ作りに励んでいる。

 「味がいい」と聞き数年前に直接購入してみたら、評判通りだった。炊きあがりのつやが良くて甘みがある。それ以来、秋は新米が楽しみになった。

 今年も届いたばかりのコメが食卓に上がる。「新米の其(その)一粒の光かな」(高浜虚子)。どこかそんな心持ちになるのは、生産者が顔見知りで、営農の労苦がしのばれるからだろう。

 聞けば、周辺の草木を肥料にして化学肥料を減らすなど、有機栽培に近い工夫をしている。電話で「おいしい」と伝えると「やはりそう言ってもらうのがうれしいな」と声が弾んだ。

 今年は田に侵入したシカとイノシシに苗や稲穂を一部食べられたそうだ。「イネの疫病」とされるいもち病の害も発生し、自身では過去最少の収穫量になったと残念そうに語る。

 全国のコメの作況指数は「平年並み」で、兵庫県も同様だ。しかし、西日本は広く日照不足や低温の影響を受け、地域によってはウンカの被害に悩むなど、個々の農家にすれば闘いの絶えない日々でもある。

 そんな中、日本の食料自給率はカロリーベースで37%と過去最低水準に落ち込んだ。兵庫県はわずか15%。多くの農地があるはずと首をひねったが、担い手不足で耕作されない農地が県内でも増え続けているという。

 「コロナ禍で日本は海外のワクチン確保に随分苦労した。もし気候変動などで海外の食料生産が減少したらどうなる…」

 農を営みながら不安を感じると、先輩は話す。地元産の新米の一粒一粒が、私たちの食を支える貴重な「光」に思える。

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