日々小論

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 国際ピアノコンクールの魅力を描いた文学作品では中村紘子さんの「チャイコフスキー・コンクール-ピアニストが聴く現代」(1988年)が有名だが、近年では恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」(2016年)が出色だった。予選から本選へ向かう4人の若者に焦点を当て、それぞれの胸に去来する葛藤や情熱が実際に音が聞こえてくるような臨場感で描かれる。

 その1人、明石市生まれが名前の由来という28歳の高島明石がコンクールの魅力を語る場面がいい。「みんなが自分も素晴らしい音楽を作り出したい、もっと上手になりたい、ってもがき苦しんで自分の音楽を追求してるからこそ、てっぺんにいる一握りの光を浴びてる音楽家の素晴らしさが余計際立つ」

 現実のコンクールでは半世紀ぶりの快挙が先日あった。第18回ショパン国際コンクールで反田(そりた)恭平さんが2位に、小林愛実(あいみ)さんが4位に入賞した。2位受賞は日本勢最高位だった1970年の内田光子さんに並ぶ。

 反田さんがファイナルで弾いた協奏曲第1番。「格別な存在。10回や20回弾いたのでは本質はわかりません」と前に雑誌インタビューで述べていたが、本番は緩急自在、情感たっぷり。3楽章の民族舞踊をモチーフにしたロンドは躍動的でユーチューブに引き込まれた。コンクールは有望な新人を見いだすというよりも、磨き抜かれた個性の燦(きら)めきをオンライン配信で共有する場になったと実感した。

 ショパンコンクールは創設から94年になる。現実が小説以上に面白いことは中村紘子さんの作品が示すとおりだ。入賞者がその後、どう進化していくか。アルゲリッチやユンディ・リを生で聴いたときに感じた喜びがもっと身近になりそうだ。

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