日々小論

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 同世代の多くが筆者同様、定年後も勤めを続けている。「生涯現役」の掛け声に関係なく、収入維持や生きがい重視など、それぞれの選択の形である。

 その中で、宝塚に住むある友人は63歳で会社勤めを辞めた。雇用継続よりも自由な暮らしを選んで、1年ほどになる。

 本や芝居が好きで、世のしがらみを嫌う性分。「楽隠居」は彼らしい選択と思ったが、実はコロナ禍も少なからず影響していたことを最近知った。

 退職時は大阪都心の私鉄駅で駅員として働いていた。第1波の初期の頃は政府がインバウンドを制限せず、中国からの観光客の波を連日さばき続けた。

 乗客との接触が駅員の仕事。ただ、年齢と重症化リスクを考えると、少しは距離を置けないかとも悩んだ。「それならもう辞めたら」という奥さんの一言が背中を押したという。

 その友人から隠居生活の楽しみ方を一つ教わった。路線バスによるまち探訪である。

 近隣の駅には必ず駅前にバス停がある。路線図には行ったことのない地名がずらり。夫婦で駅前からバスに乗り、知らない場所で下車する。周辺を散策した後は帰りのバスを待つ。

 混雑を避けて平日に限定し、朝食を遅めに取り、外食はしない。感染対策を守りながらの、水入らずの“小旅行”。

 「帰りのバスはいつ来るかと心細くなるような場所でも、今度は違う季節に来てみたいなと思う。そうやって自分たちの大切な場所が増えていく」

 話を聞きながらワクワクしてきた。自宅周辺にもよく知らない場所はある。遠出ができなくても身近なところに「青い鳥」はいるはず。その心を持てれば、コロナのどんな大波が来ても前向きに乗り切れそうだ。

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