日々小論

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 秋篠宮妃紀子さまの父、学習院大名誉教授の川嶋辰彦さんが亡くなったニュースが流れ、その死因に目が留まった。

 「中皮腫」。極めて珍しいがんだ。胸膜中皮腫や腹膜中皮腫などがあり、胸膜中皮腫なら約80%がアスベスト(石綿)が原因とされる。昨年8月に亡くなった評論家山崎正和さんの死因も中皮腫と報道された。

 石綿による疾病というと建設労働者が思い浮かぶ。耐熱性、耐久性、加工のしやすさなどから、石綿は建築材として広く使われた。吸い込むと20~60年という長い潜伏期間を経て発症する。建設のほか、造船、鉄鋼、水道管製造、列車製造、ゴム加工などに携わった労働者が発症し、労災認定されている。

 石綿は幅広い用途があるため道具などを通じて意外な職業にも影響した。看護師、学校教諭、美容師。石綿にまみれた夫の作業服を洗濯していた主婦が発症した例もある。川嶋さんはどこかで石綿を吸い込んだのだろうか。日本は2005年までに約1千万トンを輸入。現在は輸入、製造などが禁じられているが、あらゆるところに残る。

 人口動態統計によると、中皮腫による20年の死亡者総数は1605人で、過去最多を更新した。最も古い統計記録である1995年の500人と比べると3倍以上だ。2020年の兵庫県の死亡者は103人。東京、大阪、神奈川に次いで都道府県別では4番目に多い。

 中皮腫による死亡はさらに増えると予測する研究もあり、特定の職種だけではなく誰もが発症するリスクがある。

 阪神・淡路大震災で多くの建物が倒壊し、石綿除去が十分でないまま解体されたケースもあった。私たちの肺にも石綿が忍び込んでいるのかもしれない。

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