日々小論

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 京都大学霊長類研究所(愛知県犬山市)が、事実上解体されるという。専門家以外にもその名を知られる世界的な研究機関だ。丹波篠山市出身の霊長類学者で、今年97歳で他界した河合雅雄さんも所長を務めた。

 同研究所では、飼育施設工事を巡り、元所長らによる約5億円の不正支出があったと大学当局が発表。他にも会計検査院から約6億円の不正支出が指摘された。また、元教授の論文複数に捏造(ねつぞう)があったとされる。

 当局は不正のあった2部門を含む3部門を廃止し、他の4部門を学内の別機関に移管、残りを「ヒト行動進化研究センター(仮称)」にする意向だ。

 不正が許されないのはいうまでもないが、「解体」の報を受けて学界が即座に反応した。

 日本霊長類学会が新体制の再考を京大に要望、日本人類学会有志も学術基盤が失われないよう求めた。霊長類学研究者有志は「解体をやめてください」とネットで署名を募り、3万人以上が賛同した。異例のことだ。

 日本の霊長類学は生物学者の今西錦司さんや河合さんらが創始した。1967年に設置された同研究所は国内外に開かれた拠点であり、そのため学問全体の危機と捉えられている。

 かつて同研究所に所属した前京大総長の山極寿一さんと作家の小川洋子さんの対談集「ゴリラの森、言葉の海」で、小川さんはこう書いている。「進化の過程を遡(さかのぼ)って人間の謎を探っていたつもりが、むしろ人間の進むべき未来に光が当たっていると気づかされる。ゴリラが鏡になり、そこに映し出された自らの姿に新たな発見をする」

 解体はその「鏡」を失うことにつながらないか。河合さんが健在だったら、篠山に出向いて意見を聞いてみたかった。

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