日々小論

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 JR豊岡駅に到着する直前、沿線に立つ見慣れないモノクロの建物が車窓に飛び込んできた。日本で初めて演劇やダンスの実技が本格的に学べる公立大学として、今年4月に開学した芸術文化観光専門職大学の学舎とは、訪ねてみて知った。

 実習棟の劇場「静思堂シアター」のこけら落とし公演が今月あった。演目の「忠臣蔵・キャンパス編」は、学長で劇作家の平田オリザさんの作・演出で、学生が俳優、制作、舞台技術などを担った。舞台を赤穂城から現代の学生食堂に移し、討ち入りの合意形成を軽妙に描く。

 「よく分かんないじゃん、私たち、武士道とか」と戸惑いつつも運命を受け入れ、なすべきことを見つけようとする“学生版・赤穂義士”たち。迷いや不安を抱きつつも、希望を失わない姿に、思いがけず心が揺さぶられた。「まだなにものでもない若者たちの、見えない明日への模索とも重なる」という平田さんのコメントにうなずく。

 計12回の公演は連日盛況で、延べ1300人を超える観客が訪れた。同大によると7割は地元市民だったという。学生たちを支え、希望を見いだそうとする人々でもあるだろう。

 1期生84人の8割は県外出身者。地元出身者を含め全員が1年間は寮生活を送り、2年生になれば地域に巣立っていく。4年生までそろう3年後には、300人を超える学生たちが但馬で暮らしながら学ぶようになる。進学や就職で人口構成比が落ち込んでいる20歳前後の住民が一気に増えるのだから、化学反応が起きないわけがない。

 なにものでもない若者たちが地域と関わりながら、夢を育み、はばたいていく。その成長とともに、この地がどんな変化を遂げるかも楽しみでならない。

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