日々小論

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 太平洋戦争の開戦といえば、真珠湾攻撃を思い浮かべる人が多いだろう。だが実際に最初の戦闘があったのは、その1時間ほど前、英領マレー半島に日本軍が上陸したときである。

 英領香港、米領フィリピン、オランダ領東インド(現インドネシア)…。日本軍は開戦初期の段階で、東南アジアで複数の攻略作戦を展開した。その一つが先行したマレー作戦。破竹の勢いで半島を南下し、約2カ月後にシンガポールを陥落させたことは有名だ。

 一方で、現地で日本軍がおぞましい戦争犯罪に手を染めたことはあまり知られていない。占領後のシンガポールでは多くの華僑を反日的とみなして虐殺した。マレー半島の各地でも同様の蛮行に及んでいる。シンガポールでの犠牲者数については数千とも数万ともいわれる。

 子どもを殺された母親を捉えたとされる写真を本で見たことがある。凄惨(せいさん)な光景と慟哭(どうこく)する母親の姿に言葉を失った。地元では現在もわだかまりを抱える人が少なくないようだ。

 「戦争によって人間は被害者になるが、同時に傍観者にもなりうるし、加害者になることもある。そこに戦争の恐ろしさがある」。昭和史研究で知られ、今年1月に亡くなった作家の半藤一利さんが著書「戦争というもの」(PHP研究所刊)に記した言葉だ。

 来月8日で太平洋戦争の開戦から80年を迎える。

 いまに生きる私たちがなすべきは、過ちも含めてこの国の過去に向き合い、得られた教訓を次世代につないでいくことだろう。そのためにも、日本の「被害者」の側面だけでなく、「加害者」としてのそれも伝えていかねばならない。節目を前に、改めて感じていることである。

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