日々小論

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 「なんでカードをツータッチせなあかんの?」。通勤で利用する神戸市バスの車内で、2人連れの会話が聞こえてきた。

 神戸市交通局は今春から、バスの乗車時と降車時に、ICカードを読み取り機にタッチするよう呼び掛けている。PRに躍起だが、なぜデータを収集するのかの説明は十分ではない。

 少子高齢化などの影響で利用の減少が続き、新型コロナウイルス禍が拍車をかける。87路線のうち黒字はわずか11路線。コロナ禍の前から深刻な運転手の人手不足にも直面している。

 神戸市は有識者会議を設け、運行距離や所要時間、乗降客数、利用目的、車内人数などのデータを用いた適切な路線や便数を議論してきた。冒頭のツータッチも事業改善策の一環だ。

 先例がある。埼玉県川越市のイーグルバスは、バス停間の乗車人数、遅延状況の秒単位での把握など精密なデータを集め、それを「見える化」した。

 なぜ、そこにバス停があるのか。運行計画も職員の勘や経験に頼りがちだ。同社はデータを基に、バス停の新設や移動、高齢者の利用が多い日中は電車との乗り換え時間に余裕を持たせるダイヤ修正などをした。住民らへの定期的なアンケートも実施。乗客の動きや需要が見え、利用増加につながったという。

 神戸市は今後、路線ごとの利用状況や収支の公表を検討している。収支改善だけを考えてデータを「見える化」すると、不採算路線は切り捨てるのかとなりがちだ。利用が少なくても、買い物や病院に通う高齢者らがいる。数字の裏に隠れた真実を意識しなければならない。

 得られたデータは現状を示すツールでしかない。問われているのは、これを分析し、生かす人間力ではないだろうか。

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