日々小論

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 レジに並ぼうとすると、床に貼られた足形シールの上に思わず立ってしまう。列が進むと次の足形の上に。レジ待ちの列は等間隔が保たれている。

 人の行動分析をもとに、自発的に好ましい方向へ促す「ナッジ理論」は、2017年にノーベル経済学賞を受けた米シカゴ大教授の行動経済学者リチャード・セイラー氏が提唱した。ナッジは「肘でそっと押す」と訳される。足形シールにのってしまうのは、その代表例だ。

 尼崎市役所の職員有志11人が、この理論を政策立案に生かせないかと取り組んでいる。国内の自治体では横浜市が19年2月に始め、尼崎市で同年10月にできたユニットは国内2番目、西日本で初という。大阪大大学院の大竹文雄教授がアドバイザーで参加している。

 ユニット結成の翌年からコロナ禍に見舞われた。シンガポールのエレベーターの例を参考に、商店街の精肉店の協力を得て陳列ケース前に足形シールを貼った。ソーシャルディスタンス対策の好例として、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局が20年7月に発行した資料に掲載されるなど注目された。

 中心人物は、こども青少年課係長の江上昇さん(43)だ。28歳のとき漫才師から職員に転身した。当時、小泉政権の三位一体改革で市財政は悪化し、庁内に閉塞(へいそく)感が充満した。市が大手広告代理店博報堂から招き入れた人材と一緒に「何かおもしろいことを」と自主研修グループをつくった。ユニットはその延長線上にある。

 自治体の市民向けメッセージ一つでも、さまざまな施策の効果を左右する。足形シールのように、市民をよりよい方向にいざなう手法として研究と実践を進めてほしい。

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