日々小論

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 中学生のとき、米国出身の英語教師が赴任してきた。金髪の若い男の人だった。初めて聞き取れたのは、「Be quiet!」(静かに!)である。先生は多分、怒っておられたのだろうと思うが、何だかうれしかった。

 本物の外国語に最初に接した日のことはなかなか忘れない。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」を見ていて、そんなことを思う。「May I help you?」(何かお困りですか?)。主人公の女性が進駐軍の兵士に尋ねる場面では、生の英会話に高揚している様子が伝わってきた。

 アポロ11号が月面着陸した折のテレビ通訳で知られ、「同時通訳の神様」といわれた国弘正雄さんも初体験の思い出は鮮烈であったらしい。「What is your country?」(あなたの国は?)。相手は「スコットランド」だと答えた。

 自伝によれば、当時は中学生で「通じたことがうれしくて、天にも昇る心地だった」とか。驚いたのはその場所が神戸の捕虜収容所であったこと、そして戦時中であったことである。

 東京から引っ越してきた国弘さんは、神戸一中(現・神戸高校)に通った。同級生だった作家の小松左京さんはその英語力が「群を抜いてすぐれていた」と回想している。

 自分の英語を試してみたいという思いが抑えきれず、憲兵の目を盗んで柵越しの若い外国兵に声をかけたそうだ。戦後は三宮や元町で進駐軍の兵士に声をかけては「教科書を読んでほしい」と頼み、発音を習得したという逸話も残っている。

 日米開戦から80年。外国語を自由に学べ、接することができる平和をかみしめる。

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