日々小論

  • 印刷

 今年7月、見知らぬアドレスからメールが届いた。差出人はロンドンの出版社。神戸の詩人・竹中郁(1904~82年)の詩「書物」をアンソロジーに載せたいから、著作権者に連絡を取りたいという。怪しい節はなかったので、あらかじめ了承を得た上で遺族に取り次いだ。

 しかし、なぜ当方に問い合わせてきたのか。その疑問は、相前後して届いたメールで解けた。世界中の詩を紹介するウェブサイト「ポエトリー・インターナショナル(PI)」の日本人編集者が仲介してくれたのだ。地元紙の記者なら何か分かるだろうと見当をつけたらしい。

 PIはオランダに本部を置き、1970年から国際的な詩祭を開催。2002年からは世界各国の編集者らが、自国の詩に英訳を添えてウェブ上で公開している。その数は約100カ国語、1万編以上に上る。熱心な活動は知っていたが、外部の出版社からの要望にもこれほど誠実に応えるのかと畏れ入った。

 連絡をくれた日本人編集者は一個人としての参加だが、PIに携わる編集者の多くは自国の公的芸術機関に属しているという。諸外国では言語文化の発展に、人も資金も投じているのだ。一方、ただでさえ貧しい日本の文化予算から、詩に費やされる額など微々たるものだろう。世界に誇り得る美しい詩はわが国にもあまたあるというのに。

 最初のメールから数カ月、晴れて出版された選詩集「ブックス&ライブラリーズ」には、ダンテやゲーテ、ワーズワースと並んで竹中郁の名前がある。何とも喜ばしい限りだが、翻って地元の私たちは、どれだけ先人の作品を読んでいるだろう。神戸市立中央図書館では今、竹中郁のミニ展示が開かれている。この機会に足を運んでみては?

日々小論の最新
もっと見る
 

天気(1月28日)

  • 10℃
  • 4℃
  • 10%

  • 6℃
  • 0℃
  • 50%

  • 11℃
  • 3℃
  • 10%

  • 9℃
  • 2℃
  • 30%

お知らせ