日々小論

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 コロナ禍の米ニューヨーク市で、ジャズの巨匠、ルイ・アームストロングの代表曲「この素晴らしき世界」が盛んに演奏されているという。最近見たテレビドキュメンタリーでは、人種も年齢もさまざまな人たちが、路上で、再開したライブハウスで、思い思いに表現していた。

 ニューヨーク市は昨春、全米最大のコロナ感染地となった。現在はオミクロン株が猛威を振るう。ささやかな日常の輝きを歌ったこの曲は、ベトナム戦争が泥沼化し、人種間の争いも深刻な54年前に録音された。今の彼(か)の地で、ひときわ心に染みいるように響くのだろう。

 ルイ・アームストロングといえば、個人的には「明るい表通りで」が阪神・淡路大震災の記憶と結びつく。世界恐慌で社会が混乱した1930年代に作られた曲だ。日本では「朝ドラ」で物語の鍵として使われ、久しぶりに聴いた人も多いと思う。

 あれは地震が起きた翌月だった。神戸市長田区の焼け残った商店街で、取材帰りに街頭ライブに出くわした。そこで女性ジャズシンガーが歌っていて、おばあちゃんたちが涙ぐんだり、笑顔で手拍子を取ったりしていた。疲労と寒さを忘れ、自分も聞き入った。

 このシンガーには後にインタビューした。ボランティアとして被災地に通い、何度も「明るい表通りで」を歌ったという。「戦後にヒットした『リンゴの唄』の英語版って感じ」との語りに、なるほどなぁと深くうなずいたのを覚えている。

 いつかパンデミック(世界的大流行)を過去のこととして振り返った時に、どんな音楽が呼び覚まされるだろう。変化を余儀なくされた日常のささやかなあれこれに思いをはせつつ、ふと考える。

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