日々小論

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 政府の観光支援事業「Go To トラベル」が全国で停止して1年が過ぎた。今月にも再開する予定だったが、岸田文雄首相は年頭記者会見で、その時期に関して「新型コロナのオミクロン株対応に万全を期すのが最優先。慎重に考える」と述べた。感染者数が増える現状をみれば、当然の判断だろう。

 海外に行くのは難しく、国内旅行にも気を使わなければならない中、旅好きに限らず「遠くへ行きたい」との思いが募っている人は少なくないと思う。

 昨年末、アマチュアの写真展で「7平米のセカイ」という作品を見た。2カ月弱の入院生活を題材にして、カーテンやベッド周りの備品などの写真を集めていた。モノクロの陰影が美しく、狭い病室でこれだけの表現ができるのかと感心した。

 そういえば、世界的な写真家・植田正治(しょうじ)(1913~2000年)は、郷里の鳥取県を離れずに活動し続けた。県内の砂丘で撮った作品群が有名だ。被写体を自在に配した演出写真は、欧米でも「Ueda-cho(植田調)」と呼ばれる。

 植田は外国での作品も残しているが、身近な世界の中に見るべきものがあると証した。

 夏目漱石は病気がちの晩年、自宅で見聞きしたことなどを随筆集「硝子(がらす)戸(ど)の中(うち)」に書いた。

 「書斎にいる私の眼界は極めて単調でそうして又極めて狭いのである」との言葉に反するように、そこでの思索は幅広く、豊かさに満ちている。「家も心もひっそりとしたうちに、私は硝子戸を開け放って、静かな春の光に包まれながら、恍惚(うっとり)とこの稿を書き終るのである」

 新たな年、コロナの早い収束を願いつつ、身の回りの世界を慈しみ、日々を丁寧に暮らしていくことも大切にしたい。

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