日々小論

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 「公」がやせ細ることの危うさを、コロナ禍の日々で思い知らされている。最前線に立つ保健所の数はこの30年で半減し、公立の病院、病床数も減少した。行政「改革」の結果が、一気に跳ね返ってきたと感じる。

 そんな中、フレデリック・ワイズマン監督の最新作「ボストン市庁舎」が、兵庫県内で公開される。1930年生まれの巨匠がカメラを向けたのは、米国東部のボストン市だ。約70万人の住民の55%が非白人、3割近くが外国生まれ。所得格差の大きさが、市民の暮らしに影を落とす。

 高齢者やホームレス、移民の支援、警察業務、ごみ回収、企業との連携、食料配布、学校の定員を巡る審議…。1万8千人の市職員が働くさまざまな現場が、スクリーンに登場する。

 市庁舎の内外で、人が集まり意見交換する。利害も生活環境も異なる多様な人々が何とか折り合いを付けるには、明確な言葉と、声が届いたと納得する過程が欠かせないんだなあと実感する。一方、根気がいるなあと少々ため息も出る。

 困り事を少しでも解決しようと知恵を出し合ったり、個々の事情に耳を傾け、柔軟な対応をしたり。身近な役所にも、自分が知らないだけで、きっとこんな職員はいるのだろう。

 本作は274分。映画館に足を運ぶには、ちょっと決意がいるかもしれない。けれど、災害が多発し高齢化が進む社会で、なぜ行政は必要なのか。私に何をしてくれて、私は何ができるのか。公務員バッシングを続ける政党が勢いを増す中、思いを巡らせる時間を、優れたドキュメンタリーは与えてくれる。

 元町映画館(神戸市中央区)で22日から、豊岡劇場(豊岡市)で28日から上映予定。

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