日々小論

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 太平洋戦争が始まった1941(昭和16)年12月、「ゲゲゲの鬼太郎」の漫画家、水木しげるさんは19歳だった。2年後、召集令状が来る。

 南洋の激戦地ラバウルで敵襲に遭い、命からがら部隊に帰還すると上官に言われた。

 「みんなが死んだのに、お前はなぜ逃げて来たんだ。お前も死んだらどうだ」

 思いもかけない言葉に「ガクゼンとした」と、自著「ねぼけ人生」に書きとめている。人間が人間の心をなくすのが戦争であり、軍隊だった。水木さんはその後、爆撃で左腕を失う。

 2015年に93歳で亡くなった水木さんは、1922(大正11)年生まれ。同い年には作家の瀬戸内寂聴さん、哲学者の鶴見俊輔さん、プロ野球南海、巨人のエース、別所毅彦さん、作家の山田風太郎さんらがいる。どなたも今年が生誕100年。自伝などをたどれば、青春は戦争のただ中にあった。

 「おそらく太平洋戦争の戦死者は、勃発時十九歳であった大正十一年生まれの人間が一番多いのじゃないかと思う」。風太郎さんがある随筆に書いていたのを思い出す。

 戦没学生の手記集を開き、一人一人の生まれ年を見た。「大正11年」とその前後が確かに多いように感じる。その一人、22歳の特攻隊員は出撃の前夜、次のようにしたためた。

 「明日は自由主義者が一人この世から去って行きます。彼の後姿は淋しいですが、心中満足で一杯です」(「新版 きけわだつみのこえ」より)

 想像してみる。歴史が違えばその人は今年、家族に囲まれて百寿の祝いを受けておられたかもしれないと。

 戦後77年。「100歳」の声に耳を澄ます。

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