日々小論

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 1月17日を迎えるころになると、本棚から1冊の辞書を取り出す。同じような意味の言葉、類語を集めたものだ。少々古びてカバーもなくなっている。

 この辞書は数年間、行方知れずだった。1995年の阪神・淡路大震災で倒壊した兵庫署のがれきの中から見つかり、手元に戻ってきた。

 震災前の91年から1年間、神戸市西部の警察署を担当した。兵庫署の記者クラブに詰め、出来の悪い事件記者として日々を過ごしていた。各課を回り、記事を書き、他社の記者と雑談した。食堂もよく使った。署内にいる時間は長かった。

 兵庫署を離れて3年後に震災があった。築25年を過ぎた鉄筋コンクリート4階建ての庁舎は1階が押しつぶされて崩壊、2階以上も使用不能となった。

 署員らは玄関先にテントを張っただけの緊急現場指揮所で対応を始め、プレハブ庁舎などで業務を続けた。97年に構造強化を図った庁舎が完成した。

 当時の署員は「災害対策の拠点として警察署はつぶれてはいけないと実感した」と語っている。震災後、耐震改修促進法が施行され、公共性の高い建物の耐震診断や補強が始まった。

 記者クラブは1階にあった。辞書はどこかに置いていたのだろう。名前を書いていたため、関係者が別の記者を通じて届けてくださった。手にしたときの驚きと感慨は忘れられない。

 倒壊した兵庫署では署員10人が生き埋めになり、うち1人が亡くなった。3時間閉じ込められて救出された署員は、死を覚悟したと証言している。

 地震が30年前に起きていたなら、自分ががれきの下になっていたかもしれない。辞書を繰るたび、生と死が紙一重であることを痛感する。

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