日々小論

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 思想家カール・マルクス(1818~83年)がブームだ。パンデミック(世界的大流行)や気候危機といった待ったなしの現実を前に、資本主義に人類の未来を委ねていてよいのかという疑問が背景にある。不朽の書「資本論」を軸にベストセラー「人新世の『資本論』」を書いた経済思想家斎藤幸平さん(34)と環境経済学者宮本憲一さん(91)の対談を昨年12月、取材した(同30日付文化面)。

 3時間を超す議論は白熱したが、感嘆したのは2人の文献理解の深さだった。古今東西の学説に通暁し、時代の文脈とともに理解しているので生き生きと再現できる。中でもマルクスの現代的評価が興味深かった。

 その熱気に刺激されて正月休み、書庫から資本論を取り出した。冒頭から難解で学生時代はすぐに挫折した記憶がある。マルクス研究の最高峰「ドイッチャー記念賞」を日本人初、史上最年少で受賞した天才肌の斎藤さんにしても「読破するのはかなりの難行。分厚くて叙述スタイルも独特」という。

 一方、ベテランの宮本さんは「面白い読み方」を推奨する。第1巻第23章「資本主義的蓄積の一般的法則」を先に読むことだ。産業革命期に苦闘した公衆衛生官の報告書などを使って、労働者階級の状態がリアルに描かれる。「推理小説にたとえれば犯人を捕まえた結論から読むことになる」という。

 資本主義が発展する中で置き去りにされる住宅や生活環境、健康、教育…。数々の困難は都市・環境問題につながる。天然痘やチフス、コレラといった疫病のリスクにさらされる描写も今読むと実に生々しい。150年以上前の本が宿す生命力。マルクスの資本主義批判や未来社会への思想は生きている。

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