日々小論

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 新潟出身の漫画家水島新司さんが亡くなった。代表作は多いが、個人的には強肩強打の捕手山田太郎らが高校野球で活躍する「ドカベン」にはまった。

 魔球などに頼らず、ルールを駆使した作戦や駆け引きの妙で勝負するリアリズム。誰がヒーローになるか分からないわくわく感。野球の奥深さを追求した作品の魅力は語り尽くせない。

 それでもあえて付け加えるなら、地方のにおいだろうか。

 例えば、山田たちの明訓高校(神奈川県)が1年夏の甲子園決勝で戦ったのは福島県のいわき東高校。炭鉱閉鎖でばらばらになる故郷に優勝旗を、という地元の期待を背負っていた。

 積雪が多い寒冷地は不利とされてきた時代だ。東北勢の活躍は雪国育ちの水島さんの夢でもあったはず。シリーズ中で「無敗の明訓」が唯一破れたのも岩手県の弁慶高校だった。

 最近は練習環境の差を感じさせないくらい、東北勢の強豪校が増えた。現実世界で優勝旗が「白河の関」を越える日も近いのではないか。

 貧しさも正面から描いた。両親を事故で亡くした山田は幼い妹とともに畳職人の祖父に育てられ、高校進学を諦めていた。エース里中は母子家庭で母親の病気のため高校を中退する。どちらも家族や周囲の支えで逆境を乗り越えるのだが、家庭の事情で高校に進めなかった作者の願いでもあったと思う。

 「野球狂の詩(うた)」で女性プロ野球選手水原勇気を生みだした時は「絵空事」と否定的な声も多かったという。だが近年、プロ球団による女子硬式野球チームの創設が相次いでいる。

 野球を愛する人たちへのエールに満ちた物語は、これからも現実の壁を越える力になってくれるに違いない。

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