日々小論

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 2005年、兵庫県の多可郡旧3町が「多可町」となる合併の過程を取材した。協議では合併の枠組みや旧町ごとの差異などを巡り、対立もみられた。

 あれから17年。「敬老の日発祥のまち」「酒米・山田錦のまち」「杉原紙のまち」といった旧町それぞれの魅力を一体的に引き継ぎ、田舎暮らし人気の高まりを背に「神戸から1時間で行ける田舎(中山間地域)」をPRする。地道な協議を重ねて対立を乗り越えたまちは、小さいながらもきらりと光る。

 合併直後から3期にわたって町長を務めた戸田善規さんは「住民間のしこりをなくし、旧3町の融和が最も大きな課題だった」と振り返る。

 今、私は新聞紙面を編集する部署で、日々「ロシア 第2の都市攻撃」「ウクライナ民間人2000人死亡」といった外信ニュースなどを紙面化する仕事をしている。兵士の父を残して国外に逃れる子どもの涙、がれきの山と化した町、世界中で暴挙に抗議する人々…。記事や写真の一つ一つに、深い悲しみと大いなる怒りが満ちている。

 多可町と同じ年に旧4町が合併した佐用町にある県立大西はりま天文台で、地球外知的生命、いわゆる「宇宙人」を探索する天文科学専門員の鳴沢真也さんは説く。「地球は、はるか広大な宇宙、銀河系の端にある片田舎の星」と。そんな片田舎の星で暮らす人同士が対立を乗り越え、肩を寄せ合い、生きていく知恵は、同じく片田舎にある兵庫にも詰まっている。

 国と自治体では次元が違う、と言われるかもしれない。だが小さな知恵の積み重ねが私たちの今を築いてきた。その知恵にこそ目を向けてほしい。暴力や涙ばかりを伝える紙面作りは、もう終わりにしたい。

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