日々小論

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 「お元気ですか。新生わたす日本橋へぜひおいでください」。そんな手紙が届いた。

 東京・日本橋にある「わたす」は7年前にできた東北の情報発信拠点だ。宮城県南三陸町産の杉が香るレストランでは、カキや銀ザケ、野菜の料理が味わえる。東北の商品や本を集めたマーケットとライブラリー、地元の子どもたちと交流できるテレビ会議システムもある。

 きっかけは東日本大震災にさかのぼる。現地の惨状に心を痛めた三井不動産の若手社員、宮崎さち子さんが南三陸町で避難所のボランティアに参加し、地元の人の温かさに触れた。その思いが社内に広がり、会社として何かできないかと有志9人で知恵を出し合い、開設したのが「わたす」だった。

 チームには神戸市兵庫区出身の冨田貴彦さんもいた。中学1年で阪神・淡路大震災に遭い、2度目の大震災には同社の東北支店で遭遇した。自らの体験から「被災地のつらさは分かる」とプロジェクトに参加した。

 旗振り役の北原義一副社長はプライベートで東北にたびたび足を運び、仮設住宅の集会所で地元の人と語り合った。「極限状態を経験しても打ちひしがれず、崇高で凜(りん)とした姿勢に魂を揺さぶられた」と振り返る。

 メンバーの思いを乗せた施設には、一昨年9月までに約10万人が訪れた。昨年、目抜き通りの日本橋三井タワーに移り、1・5倍に広がった。コロナ禍の影響もあり、運営は厳しい。北原さんは「東北の食材を使い、地元に多少の雇用も生んだ。赤字であっても、赤字じゃない」と捉えている。

 施設を訪れた南三陸町の佐藤仁町長は「ご縁に感謝する」と笑顔で杯を重ねた。東北へ「わたす」思いは揺るがない。

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