日々小論

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 東日本大震災から11年になった日の前後、現地からたくさんの写真が届いた。その中で、しばらく見入ったものがある。福島県浪江町にある慰霊碑の前でじっと手を合わせる女性を写したものだ。紙面にも載った。

 黒御影石だろうか。慰霊碑の表面が美しい鏡になり、亡くなった人の名前の中にこの女性が立っているように見える。

 町に尋ねたら、同じような慰霊碑が他の地域にあり、参考にしたのだという。映る碑は意外にあるのかもしれない。

 見ているうちに、米ワシントンにあるベトナム戦争戦没者慰霊碑のことを思いだす。訪れたことはないが、紹介する記事や出版物は何度か見た。

 地面をV字に掘り込んだなだらかな坂に沿い、6万人近い戦死者、行方不明者の名前を刻んだ慰霊の壁が続く。素材は磨いた黒御影石である。立ち止まって見つめると、戦死者名と自分の顔が重なってくる。

 1981年に公募で選ばれたデザインだ。一流の建築家も応募していたようだが、誰の案かが分からないようにした選考の結果、建築家を志すアジア系女性、マヤ・リンさんの作品が全員一致で選ばれた。当時は大学生、21歳。

 「世界を変えた14人の女性たち」という副題のついた児童書「チェンジ・ザ・ワールド!」が彼女を取り上げている。こんな文章と共に。

 「(慰霊碑は)訪れた人の顔をうつしだす。それは、現在を生きながら、過去をしっかりと見つめる人たちの顔」

 碑の前で、過去と今とが一つになる。亡くなった方をしのびながら、自分の歩みを見つめてみる。

 慰霊について大事なことを、1枚の写真から教わる。

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