日々小論

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 森繁病、というのがある。名づけたのは作家小林信彦さん。

 森繁とは森繁久弥さんのことだ。軽妙な演技で人気を呼び、ミュージカルでも評価を得た。話芸にも優れ、大衆芸能部門で初めて文化勲章を受けた。

 この歩みに刺激され、いや、勘違いをして、笑いの世界から身を起こして性格俳優になることを夢見る病だという。著書「日本の喜劇人」で、かからなかったのは、由利徹さんやわずかなコメディアンだけと書く。

 東京はそうかもしれない。しかし関西のお笑い界は、病と縁遠かったのではないか。

 演劇雑誌「新劇」が吉本新喜劇特集を組んだのは1991年の7月号である。当時47歳だった池乃めだかさんの言葉が裏づける。吉本新喜劇が東京でウケるのはなぜ? と問われ、こう返した。

 「東京の芸人さんは、売れてくるとすぐに文化人になるでしょ。司会したり、コメンテーターになったり。そうなったら、もうアホなことは言えまへんわ。そやけど僕らはあくまでも芸人です。ええ年してこんなアホみたいなことやってるオッサンは、あまりいてへんのかも知れまへんな。それが新鮮に映ったんでしょう」

 人気に浮かれず、冷静である。森繁病の気配はない。

 それから、幾年月。吉本興業は創業110周年を迎えた。記念公演の記事を読みながら、お笑い好きの頬はつい緩む。

 小柄な池乃さんはいつもの派手な服で舞台に立つ。黒マントに水玉模様の衣装というけったいないでたちで現れたのは、80歳の坂田利夫さん。枯れない。

 関西の料理はあっさり味である。でも笑いは、こってりと濃い。薄めてはいけない関西風味と、一ファンは願う。

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