地元にとっては、半世紀来の悲願だったという。
神姫バスのダイヤ改正に伴い、姫路市南東部の四郷町明田(あけだ)に今月1日、停留所「明田」が新設された。姫路駅と同町エリアをつなぐ「見野循環線」を約2キロ延ばし、平日15便中の4便を停車させる。駅までは40分の道のり。住民による記念式典も開かれたと聞き、後日足を運んでみた。時刻表の前で話し込む2人の女性に出会った。
ともに近くに住む高齢者で、ダイヤを調べに来たという。「駅前の病院に行って買い物をして、1本乗り遅れたら帰って来られない」。「無理は承知だけど、30分に1本あればね。小さなバスでいいから、便を増やせたらいいのに」。2人でバスの活用法に思いを巡らせる。70代という女性が「まだ車を運転できるけど、いつまでもというわけにはね。どうやって暮らしていこうか」とこぼした。
明田はJRや山陽電鉄の駅、既存のバス停のいずれからも距離がある「交通空白区」だ。170世帯ほどが暮らすが、高齢化も進んでいる。高齢ドライバーの免許返納などを考えれば、公共交通機関の重要性は増すばかりだが、全国的にみても高齢化や過疎化が進む地域ほど、減便や撤退の動きが止まらない。
交通事業者の自助努力はもちろん、自治体の支援なしには成り立たなくなっている。地域交通を守る鍵は、バス停の女性たちのように、どう生かすかを考える地元住民にある。1日4便は利便性からすれば「わずか」だが、住民が乗らないことには路線もバス停も守れない。
実際にバスに揺られながら、乗り合わせた住民同士、これからの暮らし方やまちづくりを考えてみる。駅まで40分。ちょうどいい時間かもしれない。
