日々小論

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 新聞記者の役割って何ですか、と中高生に問われると、だいたいこう答えていた。

 「戦争に反対すること」

 何それ? という顔をされるから、一応、理由を説明する。

 太平洋戦争で日本は勝ち目のない戦争をした。新聞はそれを煽(あお)り、威勢のいい軍の情報を垂れ流した。そして300万人を超える日本人が死んだ。

 戦後の新聞はこの反省から出発した。人が生きたいと願う権利=人権が何より大事だと心に刻んだ。それを守るのが民主主義で、戦争は、この権利を踏みにじる最大の暴力だ。

 だから-。

 と、口にした瞬間、自信が揺らぐのを今は感じている。

 それは本当に自分の言葉だったのか。誰かからの借り物だったのではないか。

 今は分かっている。「戦争はもう起きない」と信じていたから言えた言葉だった。

 ウクライナに侵攻したロシアの政府系テレビ局に勤める女性が3月、生放送中に「戦争反対」と叫び、「プロパガンダを信じるな」と書いた紙を掲げた。

 心底、驚いた。

 ロシアは侵攻後に刑法を改正し、ロシア軍を侮辱したり、軍への「虚偽情報」を広めたりすれば最長15年の懲役を科せるようにしていた。政治問題化を避けたらしい政府の判断で女性は罰金刑で済んだが、今後どうなるか分からない。

 ツイッターで「この狂気を止められるのは私たちの力だけ。(抗議)集会に行こう」と訴えたこの女性は、同僚も国内報道に納得していないとし「葛藤を抱えている」と思いやった。

 葛藤を抱えたまま、だんまりを決め込む。怖いからだ。きっと私もその一人になるだろう。この自覚から始めるしかない。

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