日々小論

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 藤子不二雄さんの漫画には、子どもの頃に随分はまった。藤本弘さんと安孫子(あびこ)素雄さんのペンネームと知り、作者2人の風貌が異なることにも驚いた。

 ベレー帽をかぶり芸術家然とした藤本さんと、七三分けにサングラスの安孫子さん。どう見てもタイプが違うのに、どうして一緒に描けるのかと。

 実際、「オバケのQ太郎」を最後に2人は別の道を歩み、藤本さんは「ドラえもん」、安孫子さんは「笑ゥせぇるすまん」などを生み出すことになる。

 藤本さんは人物描写が柔らかく、子どもらしい夢が膨らむ物語。安孫子さんはやや線が固めで、他人への恨みなど心の闇を突き、ドキリとさせた。

 合作「オバQ」の時代も微妙に異なる画風で、個性を磨いていたようだ。一つの名前でも、つかず離れず、競い合い、高め合っていたのだろう。

 個人的には、先日亡くなった安孫子さん(藤子不二雄〓)の作品の印象が強い。

 例えば、天涯孤独の少年が旅する連載漫画「フータくん」の最終回。ようやくある家庭に迎えられたフータくんは、ふと流れる雲を見上げ、自分の姿を重ねてしまう。そしてある日、フーテンの寅さんのように黙ってどこかへ旅立つ…。

 意外な幕切れに息をのんだ。その後のフータくんの運命は、想像するしかない。

 このギャグ漫画にブラックな描写はなかった。ただ、笑いの中に、一人で生きる少年の哀感やけなげさがにじんでいた。

 何が待っているか、人生、先のことは分からない。災害や病苦など予期せぬ苦難もあるだろう。でも幸運や出会いだってある。少年時代に読んだ漫画の「未完の余韻」に、今も背中を押され生きている気がする。

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