日々小論

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 「中国船、台湾で砂違法採取」の見出しが目にとまった。2月17日付の本紙外信面に載ったニュースである。台湾紙が伝えたそうだ。

 台湾沖にある広大な浅瀬で、中国船が違法に砂を採っているという。推定で年間9億立方メートル、東京ドーム約726杯分もある。なだらかだった海底はボコボコになり、大きな穴ができてしまったそうだ。建設用の骨材として使うのか、有事をにらんでの動きか。採取の理由はよく分からないようだ。

 この記事に目がとまったのは、石(いし)弘之さんの「砂戦争」を読んだ後だったからだ。砂をめぐる壮絶な奪い合いが世界で起きていると石さんは書く。とすれば、台湾沖のこの砂も?

 石さんは朝日新聞の編集委員を務めた後、東大などで環境問題を教えてきた。1年半前に出版されたこの本は、世界で起きている争奪の実情を描き、話題になった。

 粗っぽく要旨を書けば。

 -世界で採掘される砂の7割が建設用コンクリートの骨材になる。発展途上の国々が建設ラッシュで、最高品質の川砂が足らなくなった。砂漠の砂を使ったらとの声がある。しかし塩分が多く、表面がつるつるして骨材に不向きという。先を見越して国家備蓄に乗り出すところが出てきた。砂マフィアが暗躍し、強引な採掘や裏取引がはびこり、殺人事件まで…。

 どうやら、砂不足を補う骨材が開発されないと、このいさかいは終わりそうにない。

 石川啄木の一首。

 〈いのちなき砂のかなしさよ さらさらと 握れば指のあひだより落つ〉

 奪い合いの指の間から、人の命や環境などがこぼれ落ちる。悲しいと、砂が泣いている。

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