日々小論

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 サイトをクリックするだけで、自宅に本が届く。包装をびりびりと破き、お目当ての本が顔を出すとうれしくなる。コロナ禍で随分、通販サイトを利用するようになった。

 スマホの画面には好みに応じた商品をPRする「ターゲティング広告」が表示される。「私の嗜好(しこう)はこれか…」と、気恥ずかしくなることもあるが、やはりその商品が気になる。

 新聞や雑誌といった紙メディアは年々衰退。町の本屋も減少の一途をたどる。長年、本まみれで暮らし、今春、大学を定年退職したという元教授と雑談する機会があった。

 元教授は「本屋に行くようにしているんです。うろうろしていると、へー、ほー、というような本と出会うんですよ」。ターゲティング広告では分からない本と出会えると話す。

 確かに、本の帯やポップが目にとまり、ふだんは選ばないような本をつい購入し「意外と面白かった」ということがある。

 先日、本屋で見つけ、手に取った本はこれ。「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した」(光文社)。英国人ジャーナリストが、英国の片田舎にある巨大な倉庫で従業員として働いた経験をルポ。英国社会の格差やひずみ、生活苦にあえぐ移民の姿を描いた。

 また、米国発のこんな記事も読んだ。ニューヨーク市スタテン島の倉庫で4月、米アマゾン・コムの従業員が労働組合を結成したという。

 コロナで世界の消費様式や働き方が激変した。クリック一つで買い物をすると、宅配のバイクが街を駆け巡る。だがクリックの先に、格差にもだえ悲憤と汗にまみれたワーカーがいる。オールドスタイルで入手した本に気付かされた。

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