日々小論

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 神戸ハーバーランドの南、道路脇の小さな公園に不思議なモニュメントがある。ひねった帯をつなげたメビウスの輪。「横溝正史生誕の地」とある。

 言うまでもなく、横溝は「犬神家の一族」「獄門島」といった名探偵金田一耕助シリーズで知られる推理小説作家。生誕の地碑は、複雑に絡み合った難事件が解決されるさまを表現しているという。この付近、現在の神戸市中央区東川崎町で明治から大正時代を過ごした。

 「湊川と川崎造船所、山陽本線と神戸駅の機関庫に取りかこまれたところ」と自伝にある。

 今の新開地本通りを流れていた湊川は、横溝が生まれる頃に新湊川に付け替える工事が終わった。作家は「旧湊川の堤防を憶(おぼ)えている」と書く。「(新開地には)十指にあまる劇場や映画館が軒を並べ…第一次世界大戦中の繁栄ぶりはいまも脳裡に鮮やかなくらいである」

 本好きの横溝は図書館や古書店に足しげく通った。中川右介著「江戸川乱歩と横溝正史」によると、横溝と乱歩の初対面は1925(大正14)年だが、2人は22年9月、神戸・大倉山の市立図書館であった探偵小説の講演会を聞いていたという。

 大阪に住んでいた乱歩は講演に触発され、デビュー作の「二銭銅貨」を書いた。横溝は既に「恐ろしき四月馬鹿」で世に出ていた。薬剤師だった横溝はその後、上京した乱歩から「スグコイ」という電報を受け、東京で作家の道を歩んでいく。

 横溝の自伝には、幼いときに覚えた歌から「悪魔の手鞠唄(てまりうた)」が生まれた-など、興味深いエピソードがいくつも出てくる。東川崎町が数々の名作探偵小説の原点だった証しだろう。

 今月、この人気作家が生まれてから120年となる。

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