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 2年前の4月25日、一人の医師が新型コロナウイルスで亡くなった。小野市の北播磨総合医療センターの病院長(当時)、横野浩一さん。72歳だった。

 感染が分かった時、70代男性医師と報道されたが、病院名や年代から個人が推測された。国内で感染者はまだ少なく、ウイルスへの偏見も強かった。「院長がウイルスを病院に持ち込み休診させた」。家族はひどい風評被害を受けた。

 当時について、家族は「インターネットに実名をさらされ、犯罪者のように扱われた。家にそのまま住み続けられるか、不安に思った」と振り返る。

 神戸大名誉教授だった横野さんは老年医学を究め、北播磨では地域医療に取り組んだ。突然の感染と喪失に加え、ネット上にばらまかれる中傷に、家族は打ちのめされた。

 「父がウイルスを持ち込んだのではないと知ってほしい」。長女由佳さん(38)は訴えた。後に、横野さんは仕事中に感染したとして公務災害に認定される。家族が勇気を出して風評被害や闘病について語り、実態が明らかになっていった。

 それから2年。家族に吉報が届いた。横野さんが生前、研究に携わっていた糖尿病に関する貢献に授与される「坂口賞」の受賞が決まったのだ。今月、神戸で開かれた学会で、妻典子さん(67)、由佳さんと息子2人が壇上に立ち、横野さんに代わり賞状を受け取った。

 由佳さんの長男敬太ちゃん(5)は壇上で「じいじ」の写真を掲げた。次男浩大(こうだい)ちゃん(1)には、由佳さんが「父の生まれ変わり」と浩一さんの字を付けた。「孫たちが大きくなった時に、命のバトンが引き継がれたことを思い出してほしい」。典子さんは目を細めていた。

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