日々小論

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 プロ野球・阪神の低迷時代、選手に耳栓をさせる作戦を検討している、というスポーツ紙の記事を読んだことがある。容赦ない阪神ファンのやじで、選手が萎縮するのを防ぐ狙いという。半分ジョークのような記事だったが、そのやじで逮捕される可能性が出てきたと聞けば、さすがに笑えない。

 公然と人をおとしめる「侮辱罪」の罰則を厳しくする刑法改正案が先月、衆院本会議で可決された。現在は拘留(30日未満)か科料(1万円未満)だけだが、改正案には「1年以下の懲役・禁錮か30万円以下の罰金」が加わる。成立すれば「住居不定」などの場合に限らず、逮捕可能になる。

 侮辱罪の厳罰化は、交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷されたプロレスラー木村花さんが自殺した事件がきっかけだ。悪質な中傷を取り締まるのは当然だが、「表現の自由」を脅かさないか懸念されている。政治家への正当な批判で逮捕されるような事態があってはならない。

 改正法は、施行3年後に検証されることになった。不当な適用があったら、それこそ大ブーイングを上げる必要がある。

 一般論でいえば、球場のやじで処罰されるとは考えにくい。しかし、執拗(しつよう)かつ悪質と判断され、逮捕される可能性もゼロとはいえない。法案審議を機に「やじの美学」を考えてもいい。

 阪神で以前プレーしたシーツ選手に対し、「干すぞ」とからかっていたファンが、活躍し始めると「すまんシーツ、俺たちを包み込んでくれ」と謝ったとか。センスを感じる一例だ。

 コロナ禍が収まれば、球場で大きな声援を送る機会も増えるだろう。頓知が利いていて、選手も観客もにんまりするようなやじが聞きたい。

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