日々小論

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 ノンフィクション作家の澤地久枝さん(91)の凜とした声を聞いた。澤地さんといえば国会前で声を上げる印象が強い。安全保障関連法成立時は「アベ政治を許さない」の書を掲げ、今も毎月、国会前で平和と民主主義の大切さを訴え続ける。

 今年でデビュー50年。第1作は「妻たちの二・二六事件」だ。1936年、皇道派の青年将校らが官邸、警視庁などを襲撃し、蔵相らを殺害した。「至誠」に殉じた将校たちの遺(のこ)された妻たちはどんな人生を歩んだか。「巡礼のような行脚をはじめるとすぐ、私は己(おの)れの感傷や甘い主観の通用しない世界に直面した」。現場へ行き、当事者に会う。すくいあげた肉声の迫力。歴史を資料に語らせるという次元を超え、妻たちの生を支えた「想念」に迫ることで歴史上の事件を今の物語にした。評論家草柳大蔵さんの評価だ。

 作家は最初の作品に向かって成熟するという。これは澤地さんの軌跡が示す通りだ。第2作は沖縄返還を巡る外務省機密漏洩(ろうえい)事件を追った「密約」(74年)。基地、対米関係、言論の自由といった戦後史の問題をはらむ。大作「滄海(うみ)よ眠れ」(84年)はミッドウェー海戦をテーマに日米で計3400人余りに上った死者の姿や遺族の思いを記した。ディテールあってこそ歴史に血肉が通う。「妻たち-」以降、深まる哲学に感じ入る。

 原点は旧満州での敗戦後の難民生活。困窮と不安は1年に及んだ。だから今、憤りが抑えられない。復帰50年が過ぎても沖縄の基地負担は軽減されず、ロシアのウクライナ侵攻で悲惨な被害が伝わる。最近のインタビューで答えた。「今は黙っていては駄目。それぞれが戦争に反対する意思表示を」。切なる願いが刻まれた作品を読み返す。

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