日々小論

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 古代ローマ帝国の話である。

 この帝国が栄華を誇ったのは「パンとサーカス」のおかげという。パンとは生きていくうえで必要なもの、つまり小麦のことだ。国はローマ市民へ無料で提供したそうだ。

 サーカスは、曲芸や道化で楽しませる現代のものとは違う。映画「ベン・ハー」をご覧になった方は覚えているだろう。命をかけたあの戦車レース、さらに剣闘士の闘いなどもサーカスだったと、「娯楽と癒(いや)しからみた古代ローマ繁栄史」(中川良隆著)に教わる。

 胃袋を満たすだけでなく、わくわくさせるひとときを提供する。これで強大な権力を支えていたらしい。

 コロナ禍での東京五輪・パラリンピックについての報告書が、組織委員会と政府からそれぞれ発表された。概要を読みながら、つい「パンとサーカス」という言葉を思い出す。

 選手の踏ん張り、ボランティアの汗、大会役員の懸命さは今も心に刻まれている。でも。

 「コンパクト」を掲げていたのに、経費は招致段階の2倍に膨らんだ。東日本大震災からの「復興五輪」がスローガンだったが、被災地のアンケート結果を見ると、むしろ冷ややかに受け止めているように思う。

 大きな柱が見えにくかったということだろう。東京五輪についての寄稿を断った作家が、その理由として「大義」を口にしていたのを覚えている。「大義が見いだせない」と。

 この気分はよく分かる。なぜ巨費を投じる五輪が必要だったか。かのローマ帝国のように、いっときのわくわくを与えただけか。後世への遺産はあるか。

 昨夏を振り返り、あらためて問う強い声を参院選で聞かないのがまた、もどかしい。

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