日々小論

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 囲碁の藤沢里菜五段(23)の活躍が目覚ましい。本社主催の今期天元戦本戦では8強入りした。女性棋士では初だ。勝負強さに触れるたび、祖父の故藤沢秀行名誉棋聖を思い出す。

 棋界を代表する実力者だったが、借金王としても知られた。要因の一つはギャンブル。高利貸に借りてまで競輪につぎ込んだ。リスクの高い一点買いで、運が良ければ数百万円を荒稼ぎできる刺激にはまった。

 数億円に膨らんだ負債を返すため、主要な棋戦でのタイトル獲得を目指す。ところが長年の深酒がたたり、アルコール依存症が進行していた。長丁場の対局に勝つには、断酒の必要がある。幻覚などの強烈な禁断症状に耐えながら、文字通り命がけで対局した。

 最も賞金の高い棋戦を6連覇し、多額の収入を得ても、手元にはほとんど残らなかった。妻モトさんは回顧録で「金もうけはできなかったが、借金はあらかた払った」とつづる。はちゃめちゃだが、多くの人に忘れ難い印象を残す人生だった。

 この男の場合はどうだろう。山口県阿武町から誤って給付された4630万円を決済代行業者の口座に移し、オンラインカジノにつぎ込んだとされる24歳の容疑者だ。「自分の金ではない」と気楽に使ってしまったのか。だが代償は大きく、先月29日に3回目の逮捕となった。

 4630万円の大半は町が代行業者から回収した。残る340万円は善意の第三者が立て替え、本人も返済の意向を示しているという。実行を望みたい。

 藤沢名誉棋聖は若い頃、超人的な努力で芸を磨いたという。臨終の床で筆と墨を求め、「強烈な努力」という揮毫(きごう)を家族や弟子に残した。その言葉を、この男も戒めにしてほしい。

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