「バナナ埠頭」にて 論説副委員長・長沼隆之
2022/09/03 06:00
約120年前、台湾・基隆(キールン)から神戸港にバナナが持ち込まれた。日本のバナナ輸入の始まり。作家・獅子文六の小説「バナナ」の舞台にもなった。
先日、ポートアイランドにある国内最大級の青果物倉庫を見学する機会を得た。港湾物流大手の上組(神戸市中央区)が運営し、「バナナ埠頭(ふとう)」の活況を肌で感じることができた。
ここに輸入されるバナナの90%以上がフィリピン産。ちょうど、専有の岸壁にコンテナ船が着岸したところだった。
陸揚げ作業は実に素早い。船のクレーンが大きな箱をつり上げ、岸壁に下ろす。中には緑色のバナナが満載だ。すかさずフォークリフトが走り寄り、箱を持ち上げては約50メートル先の倉庫へ次々と運び入れる。半端じゃないスピードには理由がある。
品質は陸揚げから1週間程度しか持たない。だから早く積み荷を移動させ、外気に触れる時間を限りなく短くする。
温度管理は最も気を使う。倉庫内では13・5度で保冷する。冷えすぎると「風邪ひき」と言って色づきが悪くなる。逆に高すぎると追熟してしまい、変色して商品にならないという。
「昔はね、夏は氷を砕いて冷やし、冬はドラム缶にコークスをたき暖めたもんです」。約25年前、兵庫埠頭にある同社施設を取材した際に聞いた苦労談を思い出した。バナナは隣接する加工施設の「室(むろ)」で熟成させた後、出荷され、食卓に上る。
コロナ禍でも「巣ごもり需要」から繁忙が続いたそうだ。一方、「物価の優等生」とされるバナナにも国際情勢が影を落とす。ウクライナ危機などによる原油高で、原産国での生産コストや輸送費がかさんでいる。南の島で汗を流す人たちにも思いをはせつつ、ほお張りたい。