日曜小論

  • 印刷

 茶色の山肌が幅、高さとも数百メートルにわたってむき出しになっている。無人操縦の重機が急斜面にへばりつき、崩れそうな石を取り除く。地震発生から1年半を過ぎても、そんな場所がまだ残る。

 10月末、熊本地震の被災地を訪れる機会があった。震源に近い南阿蘇村は、断水などの理由から360世帯に認定された「長期避難世帯」がようやく解除された。

 しかし帰郷をためらっている村民もいる。熊本市街と結ぶ阿蘇大橋は崩壊したままで、通勤や通学、病院通いが不便だからだ。

 自宅が倒壊した陶芸家の北里かおりさんは、みなし仮設暮らしを続けながら村の集落支援員として住民の相談に乗る。阪神・淡路大震災や東北の被災地を訪れ、村の復興への助言を受けることもある。

 阪神・淡路では「予算があるうちにたくさん施設を造ってしまい、後の管理がおろそかになった」と聞いた。総額で10兆円も復旧に注がれた一方、再開発ビルには空きが目立つなど、反面教師とすべき例は確かに存在する。

 東北では「やむなく故郷に戻れなくなったら、過去を捨てて、新しく出直す」。大津波や原発被害による苦渋の選択から得られた結論は、村民に重く響くだろう。

 尊い犠牲の上に立った反省と教訓がそれぞれの被災地に生まれ、継承される。その繰り返しが次の災害への備えを固める。地震多発期に入った日本社会の宿命と痛感する。

 北里さんによると、「いつまでも地震の話ばかりでは観光客が来なくなる」との声が村内で出始めたという。

 阿蘇カルデラの壮大な風景を楽しめるトロッコ列車は一部復旧した。村には小さな美術館やギャラリー、温泉が点在し、再開した旅館も多い。

 被災地への観光訪問は支援活動につながる。これも、阪神・淡路や東北など過去の災害で得られた教訓だ。色づき始めていた南阿蘇の紅葉は、きっと今が見ごろだろう。

日曜小論の最新

天気(4月22日)

  • 24℃
  • ---℃
  • 0%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

  • 26℃
  • ---℃
  • 0%

  • 30℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ