日曜小論

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 イカナゴの稚魚であるシンコ漁が解禁になるたび、「不漁」の予測がつきものになった感がある。

 二十数年前は3万~4万トン台だったイカナゴの漁獲高は近年1万トン台に落ち込み、昨年は千トンを割った。今年の漁期も短くなる。

 シンコは冬に生まれ、海底の砂の中で暮らす。その砂が、瀬戸内では高度成長期の建設ラッシュで大幅に減った。最近は海水中の栄養分の減少も指摘されている。

 人間にねぐらを奪われ、餌は減る。イカナゴの受難の厳しさはいかばかりか。

 播磨灘や大阪湾では昨年、漁の解禁日に加え終漁日まで決めた。漁業者もクロマグロやニホンウナギのように乱獲せず、真剣に資源を守ろうとしていることがわかる。

 だが不漁に苦しむ伊勢湾や三河湾では3年連続の禁漁に至っている。播磨灘や大阪湾もいずれ同じ道をたどるのでは-と懸念してしまう。

 そうなれば漁業者の減収にとどまらない。風物詩の「くぎ煮」が作れなくなるのだから、地域のショックの大きさは計り知れないだろう。

 しかし兵庫県水産技術センターによると、禁漁すれば直ちに資源回復に結びつくとは断言できないらしい。

 仮に禁漁によって多くのシンコが生き残れたとしても、水温や海中の栄養条件などが変化すれば、その後の成長や産卵が順調に進まないことも想定できるからという。

 過去30年の漁獲高を見て気がついたことがある。総じていえば減少傾向ではあるが、3年連続で増えていたり、4分の1に激減した翌年には一挙に3倍に拡大したりと、振れ幅が大きいのだ。

 人間に安息の地を奪われたイカナゴたちが、環境が少しでも好転すれば懸命に卵を増やし、命のバトンをつなごうとしている。

 そんなことを思い浮かべながら口にした今年のくぎ煮は、いつもの甘辛さに加え、なぜかほろ苦い味がした。

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