日曜小論

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 「島守忌(き)」を季語にした第1回俳句大会が6月、沖縄県で開かれる。

 島守とは太平洋戦争末期、沖縄最後の官選知事を務めた神戸出身の島田叡(あきら)氏を指す。戦時下の疎開、食料調達など県民の生命保護に奔走した。激戦の中、消息を絶った6月末を忌日(きにち)に設定し、俳句で功績を伝えようと企画された。

 実行委員会のメンバーは、終戦前後の生まれで生前の島田氏を知る人はいない。それでも3年前に顕彰碑を建立するなど、戦後70年を過ぎた今も追悼を欠かさない。

 その一人の名嘉山興武(なかやまおきたけ)さん(72)は1945年7月、疎開先の大分県で生まれた。米国統治下の那覇に帰ると、自分たちの土地は基地に接収され、15年間仮住まいで過ごした。山梨の大学に進学する際はパスポートを取得しての留学だった。故郷に戻り、高校教師を勤めたが、ずっと本土との壁を痛感してきた。

 沖縄は72年に日本に復帰した。2004年には沖縄国際大学にヘリコプターが墜落、昨年もヘリの窓が小学校に落下するなど危険な事故が後を絶たない。名護市の辺野古では基地建設反対の声が響く。太平洋戦争で本土防衛の捨て石にされた島は、今なお在日米軍基地の70%を負担する。

 名嘉山さんは「今もあの戦争と同じ地平にあるんです」と落胆する。理不尽な状況を解決できない政府にいら立ちを覚える時、島田氏のことを思い浮かべる。

 敗戦濃厚の沖縄で住民目線の行政に徹した島田氏。母親の疎開先で生まれ、「島田さんのおかげで生を受けた」と感謝する声をよく聞く。実行委の中にもその恩を感じる人が多い。島守忌にはそんな思いが込められている。

 俳句大会は既に公募を締め切った。島田氏の出身地・兵庫からも300人以上が作品を寄せている。著名な文人の命日に句を詠む慣習は各地に残る。この句会は沖縄の歴史を学び、平和を考える機会として続いてほしい。

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