日曜小論

  • 印刷

 もとをたどれば、ローマ法の「うその罪」に行き着くという。文書偽造を罰する法の定めのことである。

 ローマ法は古代ローマ時代に編さんされた法律の総称で、近代法の源流とされる。その精神は、明治維新後に欧州の法体系を取り入れた日本にも受け継がれている。

 刑法の教科書によると、最も古い「うその罪」は通貨の偽造罪だった。そこから偽証罪などが分かれ、最後に文書偽造罪が分化した。

 とりわけ公文書のうそを放置すれば国家が信用されなくなる。古代ローマの法官たちはそう危惧したに違いない。

 その流れをくむ日本の刑法も、虚偽公文書作成罪や公文書偽造罪などを定める。森友問題で財務省の決裁文書改ざんが発覚した時、「これはきっと罪に問われるな」と多くの人が感じたことだろう。

 人の命も失われている。そうした庶民の感覚は、極めてまっとうなものと思える。

 だが、文書改ざんで告発された当時の理財局長、佐川宣寿(のぶひさ)氏らを、検察は不起訴とした。罪に問うほど重大とはいえない、などの理由だ。

 政治との関係を考えたか、前例のない案件だからか。「無理をしたくない」という言い訳に聞こえてならない。

 検察は国民を訴追する権限を独占する機関だ。処罰すべきかを慎重に判断するのは当然だが、「罪に問うべき」との声が内部にあったと聞く。

 懸念されるのは、庶民との「乖離(かいり)」が司法や政治への不信につながることである。

 日大アメフット部の危険タックル問題で、関東学生連盟が前監督らの供述を「虚偽」と認定し、「反則を容認した」として処分した。「森友問題で、国民は検察に同じ役割を期待したはずだが…」と、長く裁判官を務めた知人の弁護士は嘆息を漏らした。

 前代未聞の「うその罪」をどう裁くか。次は市民から選ばれた検察審査会の出番となる。できればローマの法官の意見も聞いてみたいものだ。

日曜小論の最新

天気(10月22日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 0%

  • 24℃
  • ---℃
  • 0%

  • 25℃
  • ---℃
  • 0%

  • 24℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ