日曜小論

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 全国紙の女性記者Aさんは敏腕で鳴らしていた。経済取材が長く、特ダネ競争で泣かされた記者は数知れない。

 数年前、ある会合で初めてAさんに会って以来、冷静沈着な物腰にあこがれの視線を送っていたところ、複数の男性記者が耳打ちしてきた。

 「彼女、オンナを使ってネタを取ってたらしいで」

 はあ?

 「うわさやけど。財界に彼女のファンは多いから」

 優秀だと認めたくないだけやん。心の中で舌打ちする。

 「オンナを使う」という表現を聞いたことは一度や二度ではない。使うのは主に男性。具体的に尋ねても、伝聞レベルしか返ってこない。

 またも、同類の中傷が聞こえてきた。しかも大合唱だ。

 前財務次官によるテレビ朝日の女性記者へのセクハラ発言発覚で、麻生太郎財務相が「はめられたとの意見もある」と口火を切った。

 「嫌なら次官を避けるはず」「音声テープでは嫌がっているように聞こえない」。「ハニートラップだ」との暴論も。なぜそう映るのか。

 セクハラに詳しい大阪大学大学院教授の牟田和恵さんの例えがヒントになりそうだ。

 「セクハラは黒澤明監督の映画『羅生門』のようにいろいろな見え方がする」

 大ざっぱに言えば、問題行為でも立場によって全く違って見えるということ(映画を見ていない方はぜひ)。

 牟田さんは米国の女性法学者の言葉を紹介している。

 「セクハラへの女性の最も普通の対応は、起きたこと全体を無視するように努めつつ、見かけは喜んでいるように見せて巧みに男性のメンツを立ててやり、それで男性が満足して止めてくれるだろうと期待する、というもの」

 実感としてうなずける。社会的な力関係の中、自己防衛のために「嫌でもにっこり」してしまう女性は多いのだ。今、「おお怖い」とか「面倒くさい」などと思ったあなた、要注意のサインです。

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