日曜小論

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 挑戦的な座談会だったと関係者は振り返った。正直に言うとその意味に気付いたのは、会合が終わりに近づいてからだったのだが。

 原発事故から8年を経た福島の復興を考えるセミナーが先月、大阪市立男女共同参画センター中央館であった。

 まず、被災地でコミュニティー再生に取り組む福島県男女共生センターの千葉悦子館長が、外からは見えにくい被災者の実情と、復興まちづくりの現場で活躍する女性たちの現状を紹介した。

 避難指示が解除された区域でも住民の多くは戻らず、現役世代の3割が職を失ったままで生活再建の道のりは遠い。着物のリフォームや地元食材の加工・販売などに取り組んできた女性グループの中には、高齢化や解除後の暮らし方の違いなどで活動が続けられないケースが出てきた。

 生活再建の差によって被災者は分断され、地域内での対立を避けるため「原発事故は話題にしない」というムードが広がっているという。

 「なかったことにせず、語り続けなければ」。そう指摘したのは続いて登壇した関西に母子避難した女性たちだ。

 関西に避難した人たちのグループで代表を務める森松明希子さんは「被ばくを避ける権利」を訴えるたび、「中で頑張っている人がいるのに」「歩く風評被害」と批判を浴びたと語る。一時台湾に避難し、今は神戸市内で暮らす上前昌子さんは「大丈夫と思いたい心理を利用され、原発事故は終わったと思わされている。日本中の人が被災者だと思う」と話した。

 「今度は地元でも企画したい」。終了後、登壇者同士で言葉を交わした千葉館長の表情がやっと和らいだ。県外母子避難の当事者と公開の場で意見を交わすのは初めてで、緊張していたのだという。

 そこに横たわる「分断」が見えていなかった自分に、はっとした。互いの痛みに向き合い、対話する。「挑戦」の重みを改めてかみしめた。

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