日曜小論

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 沖縄には「岸本」姓が割に多いと、当地の方にうかがったことがある。ひょっとしたらわがルーツも…とひととき考えたけれど、兵庫生まれの自分と沖縄を結ぶものは今のところ、ない。

 作家の開高健さんが書いている。「新鮮な衝突感。旅の魅力はここだよ」。風景であれ、食べ物であれ、音楽であれ、未知なる文明との衝突は旅の醍醐味(だいごみ)なのだろう。

 旅先に限らない。

 小学生のころ、自宅のラジオか何かで沖縄民謡というものを初めて聴いた。「タンチャメブシ」だという。同じ節でも盆踊りの「炭坑節」とは全く違っていた。

 ヨーロッパのケルト音楽やインドネシアのガムランなどを聴いたときも、どこかしら懐かしい感じがして胸揺さぶられたが、タンチャメほどの未知との遭遇感はなかった。あれがわが人生最大の文明の衝突体験かもしれない。

 谷茶前(タンチャメ)の浜に スルル小(グワ)ぬ 寄(ユ)ててぃんどー ヘイ ナンチャマシマシ ディーアングワァ ソイソイ…。

 谷茶前の浜にキビナゴがやって来たよ、それはいいことだ…と漁村の風景を楽しく歌っているのだが、「谷茶前」と書いて「タンチャメ」とは響きがよい。愉快なときはより愉快に、もの悲しいときはよりもの悲しく聞こえる島唄の旋律は不思議である。

 見知らぬ異文化の森に分け入ると、土地の記憶がふいにたたずんでいたりもする。

 私があなたにほれたのは ちょうど十九の春でした…の流行歌「十九の春」には、〈一銭二銭の葉書(はがき)さえ 千里万里と旅をする〉という歌詞がある。

 沖縄の女優、平良とみさんの本を読んでいたら、こんなくだりにぶつかった。本土復帰前の米ドル時代、「沖縄のおばぁたちは、一セントという発音が苦手で、一セン、二センとよびならわしていました…」

 夏休みである。驚きと学びの「衝突」体験をぜひ。

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