正平調

時計2016/01/23

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21年前の今ごろに、自分で書いたメモを見つけた。地震後、神戸から大阪に出て「初めてまともな食事」と記す。記憶ではカツ丼だが、それより心に残るのはコップに入った水だ◆余震の中を阪急の西宮北口駅まで歩き、電車に乗る。大阪・梅田は昼なのにまぶしいほどの照明だった。そして水。入った食堂で出された冷たい水が、渇いたのどを流れる。「何度もおかわり」とそのメモにある◆この冬、本紙が震災にまつわる忘れられない味の話をインターネット上で募った。寄せられた声の一部が、夕刊とNEXT(電子版)に紹介された。炊き出しの豚汁、おにぎり、ラーメン…。寒空の下、温かいものを口にした喜びがつづられる◆紙面に載らなかったが、回答には「水」も多かった。「食べ物じゃなくペットボトルの水」「一番おいしかったのは水」。スーパーのからっぽの棚を見てため息をついた。備えのなさが招いた心の渇きを思う◆今、水や食料を備える人はどれぐらいいるだろう。詩人の高階杞一(たかしなきいち)さんの一編を借りる。「落ちることにより/初めてほんとうの高さがわかる/うかぶことにより/初めて/雲の悲しみがわかる」◆題名を「準備」という。あの冬のため息を集めて浮かんだ雲の悲しみを、のど元過ぎた水のありがたみを、もう一度かみしめたい。2016・1・23

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