正平調

時計2019/03/08

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三代目柳家小さんは弟子が神仏をあがめるのを見て言ったという。「お前さんは、私をおがんでいればいいの」。永六輔さんの「役者 その世界」(岩波現代文庫)に出てくる話である◆同時代を生きた夏目漱石は「小さんは天才である」(「三四郎」)と書いているが、神仏に嫉妬するあたり、さすがは天才というべきか。それとも、師匠の威厳を保とうとするところが人間らしいというべきか◆高校生の弟子が「天才棋士」だと称賛を浴びる。師匠にしたらさぞ面白くないだろう、などと考えるのは人間ができていない証拠で、その人が弟子に向けるまなざしはいつも温かい。将棋の杉本昌隆八段である◆名人戦順位戦でこのほど、B級2組に昇級した。弟子の藤井聡太七段は惜しくも逃し、師弟同時昇級はならなかった。師匠の談話。「藤井七段がいたから昇級を争えた。自分だけ昇級してしまって申し訳ない」◆2人が公式戦で初対局したときのことも忘れがたい。弟子に敗れ、杉本さんは涙ぐんだ。「私は19歳で師匠を亡くし、対局はかなわなかった。こういう形で師弟対局ができてうれしい」。いい弟子を持った、と◆何だか、さわやかな風に吹かれた気分。嫉妬にまみれ、胸に積もった浮世のほこりを、風は払ってくれる。2019・3・8

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