正平調

時計2019/03/11

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復興という長い上り坂を休みなく歩く。息を切らし、うつむいた視線の先に小さな春を見つけた。そんな心の一首だろう。〈九十の吾が転べばたんぽぽはすぐ眼の前で頑張れと云う〉◆3年前、宮城県山元町の島田啓三郎さんが地元紙に寄せている(河北新報社編集局・編「震災のうた」)。負けてたまるか。頑張ろう。老いたわが身を叱咤(しった)しつつ一歩、また一歩とたどった道程の険しさを思う◆東北では、今後も1300人がプレハブの仮設住宅暮らしを余儀なくされるという。一方で、原発事故の避難区域だったところにはなかなか住民が戻ってこない。そこに「風化」の2文字などあろうはずがない◆未曽有の災禍に見舞われた人たちとともに涙し、手をつなぎ、その荷をいくらかでも背負って歩きたい。そう誓った8年前を思い返し、胸に問うてみる。「頑張ろう」をいま、被災者だけに言わせてはいまいか◆〈散ってすがれたたんぽぽの/瓦のすきに、だァまって/春のくるまでかくれてる/つよいその根は眼にみえぬ/見えぬけれどもあるんだよ/見えぬものでもあるんだよ〉(金子みすゞ「星とたんぽぽ」より)◆歩き疲れ、立ち止まった足の下にも春を待つ根は伸びている。被災地に寄り添う心の根っこも、またきっと。2019・3・11

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