正平調

時計2019/03/13

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かかりたくないな、と思う医者がいる。詩人、中原中也の随筆「亡弟」に出てくる医者もその一人である。重い病に伏せった弟の面前で、こう言い放った。「人は諦めが肝心なのです」◆頼みの命綱である医者に見捨てられては、もはや助かる道はあるまい…弟は絶望したらしい。涙目で私を見つめた、と随筆にある。中也が24歳のとき、弟は亡くなった◆にわかには信じられないニュースだが、こういう病院も遠慮したくなる。東京都にある公立病院が腎臓病を患っていた40代の女性に対し、選択肢のひとつだとして人工透析治療を中止する案を示していたという◆透析をやめる、とは患者にとってすなわち「死」を意味している。事実、女性は1週間後に死亡した。病院は「悪意や手抜きや医療過誤はない」とコメントしたものの、詳しいいきさつは明らかにされていない◆つらい治療が続くなか、女性は心身ともにまいっていたのかもしれない。そこへ示された治療中止の選択肢が生きる意欲を失わせたのかもしれない。病院が死を誘導した、そう受け取られても仕方がないだろう◆同病院では20人が透析治療を選択せずに亡くなったとも伝えられる。記事を読むほどに、それを「病院」と呼んでいいのかどうかも分からなくなる。2019・3・13

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