正平調

時計2019/03/20

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雨宿り、といえば家々の軒下や店先が思い浮かぶ。急に降られて駆け込んで、隣のだれかと話をしたり、時には傘を貸してくれる親切な人が現れたりと、そんな体験談を聞くことがある◆都会に鉄筋コンクリートの建物が増え、人と人とが心を通わす軒下の風景を見ることも減った。寂しいけれど、「せめて心の中にでも軒を作りたいもの」。国語学者の寿岳(じゅがく)章子さんが書いていたことを思い出す◆尼崎市の中学2年の女子生徒が自殺をした要因にはいじめがあったと、第三者委員会が認めた。しかも、学校のアンケートで生徒が示したSOSサインは見過ごされ、教諭による理不尽な叱責(しっせき)も重なったという◆生徒は、先生という“心の軒”を信じて駆け込んだはずである。学校が傘をさしかけることはなかった。「死ね」「うっとうしい」。ひどい言葉の雨に打たれ、逃げ場も失う。絶望以外のなにものでもあるまい◆自ら命を絶ったその日、女子生徒は部活のトラブルで嫌がらせを受けた友人のことを先生に相談しようとしていたという。自分はつらい境遇にありながら、他人の痛みに寄り添う…なんと心の優しい少女だろう◆めぐり来る春が悲しい。本当であれば、若い命がキラキラと輝きを増す季節である。軒が、傘があったら。2019・3・20

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