正平調

時計2019/07/19

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速報に目をやり耳を澄ましながら、小欄を書いている。猛煙の中で…と想像しては息苦しくなり、何度も手が止まる◆京都市のアニメ制作会社で起きた火事は残忍な事件になってきた。男がガソリンのようなものをまいて火をつけた。仕事をしていて逃げられなかったのだろう。事態が少しずつ明らかになり、悲しみの数字が膨らむたび、心が重くなる◆ニュース映像を見るうち、尼崎市でスーパーが燃え、15人が亡くなった真昼の火災を思い出す。29年前である。兵庫県警は放火と断定し不審者の似顔絵もつくったが、有力情報がないまま事件は時効となった◆隣のビルから救いの手が伸びたのに、力尽きて黒煙の向こうに消えた人もいた。あの現場に立ち、時が過ぎて時効を迎える日に訪れ、思ったことは同じである。何のために火をつけ、これほど多くの命を奪ったか◆京都で身柄を確保された男にも同じ問いを投げつけたい。夢を紡ぐ場が瞬く間に黒焦げになった。アニメに託したたくさんの人生を猛炎で断ち切る理由がどこにある◆現実から想を得る作家高村薫さんは、かなり前から犯罪小説を書かなくなった。常識で判断できない事件、立ちすくむ出来事が増えたからという。高村さんでなくても立ちすくむ事件がまた一つ。2019・7・19

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