正平調

時計2019/08/28

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神戸育ちの作家、野坂昭如さんは人前では飯を食わないと決めていた。終戦直後に1歳半にも満たない妹を飢えで亡くしており、卑しそうに食べる姿を人に見られたくなかったという◆幼い自分の娘が菓子を口にし、すぐに放り出す様子などは直視できなかったとも語っていた。「タイムマシーンみたいなものがあったなら、亡き妹に持っていってやりたい」と(共著「少年Hと少年A」より)◆“焼け跡闇市派”と称した野坂さんら、当時のひもじさを知る人には見るに堪えない光景かもしれない。見栄えのいい、いわゆる「インスタ映え」する料理を注文したはいいが、目に余る食べ残しもあるという◆例えば、甲子園球場近くの食堂が半世紀も続けた名物の大盛りカツ丼をやめたと、記事にあった。ご飯の量は2・8合というから、完食にはちょっと気合がいる。腹をすかせた高校球児のために考案したそうだ◆インターネットに投稿するためか、スマートフォンで撮影したあと、半分以上残して帰る客が近年増えていたらしい。残飯は捨てるしかない。「何かもう情けのうなってな」。80代のご主人の談話がやるせない◆来し方に思いがめぐる8月である。「タイムマシーンがあったなら…」。ひとりつぶやいた方もいるだろう。2019・8・28

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